2016年3月2日水曜日

『殺人の疑惑』(2013)

韓国の犯罪映画というのはここ十数年流行といっていいくらいの兆しを見せているようで、特に冷酷で社会的影響を呼んだ事件をモデルにし、あるいはそれから影響を受けた作品が相次いで公開された。

そういうわけで韓国犯罪映画ウィーク!と称して、実際には毎日でもないし一週間でもないけれど何本か続けて見た(「帰ってきた韓国犯罪映画ウィーク」「韓国犯罪映画ウィーク春の特別篇」などという形で)。

たくさんネタ・バレもするだろうがそこは映画に詳しくないしブロガーでもないし、業界のしきたりにしばられずに気にしないでやっていこう。

ひとまずこれ。





殺人の疑惑 - 作品 - Yahoo!映画

この日は「なんか美女が出ていて人殺しを扱う映画はないかな」ということで、このジャケット?というのか何なのか、これに惹かれて見た。

親一人子一人で暮らす仲の良い父娘、しかし娘は父親が実は時効間近の未解決事件「イ・ヒョンホ君誘拐殺害事件」の犯人ではないか……?と疑い始める。



サスペンスの手法としてはあんまり上手じゃない感じで、いちいちこちら(観客)とあちら(作者)のテンポがずれる感じだし、音楽はやたらと鳴りっぱなしで日本の下手なドラマを見ているようだしということでちょっといらいらさせられた。

一コマも長回しっていうんですかね、ああいうのを意識したのではなく(それはそれで厭らしいのも多いけど)、冗長という印象を抱かせる。

さらに、美女を見たがってこんなことを言うのは何だけれど、娘が妙にセクシーな恰好でうろうろしているし、父親とのスキンシップの過剰な親密さははっきりいって異様である。こんなに娘とでれでれしている父親、こいつは殺人事件の犯人かどうかはともかく怪しいことは確かだ。

しかし親密な愛情を抱いている相手が実は恐ろしい人間なのではないかという疑いは、ある種普遍性に通じるものがあって、少し形は違うけれど「貰われっ子妄想」なんかもそういうところがある。

そういう疑念は生まれたり消えたり、いわば寄せては返す波のようにいくども綾をなしていくもので、特にこんなに恐ろしい思いつきであったら「犯人では?」という疑う気持ちと「いやそんなはずはない」という打ち消す気持ち、これがきつい味になってこちらをひりひりさせる、させてくれなきゃ困るところだがどうもその宙ぶらりんのぶらぶら感が足りない。

イ・ヒョンホ君殺害事件についても韓国社会としては常識の範囲内なのかもしれないが、映画としてはもう少しだけ説明があっても良かった。

ラストの二番底としての種明かしは良い。

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