丸谷才一が芥川賞候補作の選評で「病気になった人物が医者にかからない。そういう人物はいるだろう。しかし作者は物語の筋のためにそうしていて、登場人物を駒のようにして扱っている」というようなことを書いていた。
筒井康隆はエッセイで、「若い世代はロシア・リアリズムのようなくだくだしい描写を鬱陶しく思うだろう。まさにそのようなくだくだしいリアリズムを、むしろエンターテイメント作品で実現することが我々の課題であったが、その意図が伝わっていないようだ」というようなことを書いていた。
ちっとも関連していないようで、実は作品内のリアリズムというのはどういうことかについて、二人は述べている。